【栄養研究】加齢は食事誘発熱産生に影響するか?ヒト研究からの証拠の再検討(2026年)

Photo by Lily Banse on Unsplash 食事・栄養

年齢とともに代謝は低下する。これは誰もが知っている常識だが、その低下メカニズムの詳細はまだ解明されていない部分が多い。近年、コペンハーゲン大学のGonzalez氏らが発表した研究は、この疑問に一つの光を当てている。食事誘発熱産生(DIT)という、食べたあとに起こる代謝の上昇が、加齢とともにどう変わるのかを詳しく検証したものだ。結果は、多くのトレーニーが想定している以上に複雑で、実践への重要な示唆を含んでいる。

▶ 食事誘発熱産生とは何か

食事誘発熱産生(DIT)とは、食べた後に体の代謝が一時的に上がる現象を指す。食物の消化、吸収、栄養素の処理に必要なエネルギーのことで、1日の総消費カロリーのおよそ10パーセントを占める。タンパク質を食べたときが最も顕著で、炭水化物や脂肪よりもDITが高いことが知られている。多くの研究者は、このDITが加齢とともに低下し、中高年の体が若い頃より代謝が落ちる要因の一つになると考えてきた。

▶ 研究が明らかにしたこと

Gonzalez氏らの論文は、既存の人間研究をていねいに再検証している。その結果、加齢がDITを大きく減らすという従来の仮説は、思ったほど確実ではないことが浮かび上がった。確かに年齢を重ねるとDITがやや低下する傾向は見られるが、その低下幅は研究によってばらつきが大きく、また方法論的な違いによって結果が大きく変わることが明らかになったのだ。つまり、「年だから代謝が落ちるのは当然」と諦めるのではなく、より正確に自分の体の変化を理解する必要があるということである。

▶ フィジーク・ボディビル競技者への実践的な意味

この知見は、競技者にとって重要な意味を持つ。第一に、加齢による代謝低下は予想より緩やかな可能性があり、適切な食事戦略で対抗できる余地が大きいということだ。特にタンパク質摂取がDIT を高めるため、年齢を重ねても意識的にタンパク質を十分確保すれば、基礎代謝の低下を一部相殺できる。例えば、40代、50代の競技者が体を絞る際、若い頃と同じカロリーを目指すのではなく、タンパク質の割合を全摂取カロリーの30〜35パーセント程度に高めることで、食事後の代謝を効率的に活用できる可能性がある。

第二に、食事のタイミングもわずかながら影響する。複数の小分けされた食事を1日かけて摂取することで、DITの効果を分散させ、1日を通じて代謝を高い状態に保つ戦略が、年を重ねた競技者にはより有効になるかもしれない。

出典: PubMed PMID: 42371245

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